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法務部部長の山崎凡生氏と法務課課長の佐々木真氏

第41回 大和リビング株式会社(1)

第41回は大和リビング株式会社を訪ねました。大和リビング株式会社は、大和ハウスグループ企業で1989年に誕生した今年で二十歳になる会社です。不動産業におけるコンプライアンスの重要性などについて、法務部部長の山崎凡生氏と法務課課長の佐々木真氏のお二人にお話をうかがいました。

(インタビュアー:たなやん)

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交換させていただいた名刺の裏側に次のようなことが書かれていますね。

山崎氏  大和ハウスグループシンボルであるこのエンドレスハートの外側はハート型で、内側の正円は原点である「和」を表現しています。「お客様との絆、永遠の信頼」「大和ハウスグループの連帯感と絆」を意味しています。
私たち大和ハウスグループは、事業を通じて社会と共にあること、そして商品やサービスを通じ、暮らす人と共にあること。この「共創共生」の姿勢を持ち続け、誠実に社会と向き合うことが大切だと考えています。

大和リビングの名刺

このエンドレスハートができたのはいつのことですか?

山崎氏  2005年に大和ハウスグループシンボルであるこのエンドレスハートのマークができました。その当時、グループ全体が、住宅事業だけではなく、商業建築事業、リゾート・スポーツ施設事業などに広がっていました。グループ全体が大きく成長しているにもかかわらず、グループ間で競争していたような状態で、全体のまとまりがありませんでしたし、グループ全体のマークもありませんでした。そんな状態を見直して、グループ全体で一丸となって、お客様に向かいましょうという意味で、シンボルマークができました。取引先にうかがっても、このマークを見て大和ハウスグループと認識されるようになりました。いまでは、グループ全員の名刺にエンドレスハートが印刷されていて、大和ハウスのグループ会社間の絆、求心力にもなっていると思います。

大和リビングさんの「大和」は「ダイワ」と読むのですね。

山崎氏  1955年創業の大和ハウス工業株式会社の社名の由来は、創業が奈良であるため、奈良の「大和」からとったものです。「ヤマト」ではなく「ダイワ」と読ませたのは「大いなる和をもって経営に当たりたい」という意味があります。われわれ大和リビング株式会社は、1989年に設立し、大和ハウス工業株式会社のグループ企業として、同社が建築するアパート・マンションの賃貸管理業務を受け持っています。

「大いなる和」は「エンドレスハート」にも表れていますね。

山崎氏  こんなエピソードもあります。1950年9月、関西地方を襲った大型台風により2万戸近い家屋が倒壊しました。しかし、それほどの強風にさらされながら、田の稲も、竹林の竹も折れていないことに気づいた一人の男がいたのです。その人が、創業者の石橋信夫です。“なぜだろう。稲の茎も竹の幹も円形で中空をしている。だったら鉄パイプを使えば頑丈で安全な家が出来るのではないか。”日本の建築を工業化するパイプハウスは、こうして誕生したのです。鋼管構造による「パイプハウス」「ミゼットハウス」によって大和ハウス工業の礎ができあがりました。私たちの原風景は「風にそよぐ竹林」にありました。竹を輪切りにした正円がエンドレスハートの内側に表現されているわけです。

法務部部長の山崎凡生氏

コンプライアンスについてのお考えを教えてください。

佐々木氏 一般的に「コンプライアンス」は「法令遵守」と訳されています。しかし、ここに誤解が生じます。「コンプライアンス」を文字どおり「法令遵守」と捉えてしまうと、たとえば「なんだ、当たり前のことじゃないか」「法律さえ守っていればいいだろう」と安易に考えられがちです。しかし、法律には、ルールを作ることによって達成しようとする目的や、法律によって守ろうとする社会的な規範があります。
つまり、「コンプライアンス」の本当の意味は、単純に法律を守ることにとどまらず、法の目的や社会の規範を実現するため、企業や個人がそれにふさわしい行動をとることにあると考えています。ですから、大和リビングは、コンプライアンスを「法律に違反しないということだけでなく、常識や倫理に照らして、企業や個人が正しい行動を行うこと」と定義しています。コンプライアンスは奥深いのです。

なぜ今コンプライアンスが重要視されているとお考えですか?

佐々木氏 以前は、お役所の指示に従っていれば企業は責任を問われることはありませんでした。しかし今では、規制緩和によって、役所は大まかなことだけを決めて、あとは企業側の「自己判断、自己責任」でしなさいという時代になりました。したがって、企業自身が自分で法令を判断し、リスク管理をしなければなりません。
また、個人情報保護法は、EUのルールが世界的に及んでいきました。企業活動が国を越えることによって、国の法律も国際標準に合わせて変えられていきます。国の中だけでは業界慣習のような、ローカル・ルールが通用してきたのですが、法律が変わることにより、「業界の慣習」も変更を余儀なくされるようになってきているのです。
長らく日本人は「建前と本音」で物事を考えてきました。つまり、世の中には2種類の規律があると考えられていたのです。この枠組みでは、法律は「建前」、業界慣習が「本音」でした。今、あらゆる分野で「偽装」の告発が相次いでいますが、これらはその多くが、それまでもその業界では行われてきたことで、「本音」の部分で容認されてきたのです。
法律は建前ではなく、本当に守るべきルールとして捉え直されなければならない……。「コンプライアンス」の重要性が叫ばれる背景には、このような国民意識の大きな変化があると思います。

法務課課長の佐々木真氏

不動産業にとってのコンプライアンスの考えをお聞かせください。

佐々木氏 日本は、宅地建物取引業者、不動産屋さんの数が、人口比で非常に多い国です。現在、20万社の不動産業者があるといわれています。ところが、同じ不動産業の看板を掲げていても、上場大企業から少人数の家族経営のところまであり、なかには暴力団のフロント企業が含まれている可能性すらありますので、取引を行う際には十分注意する必要があります。
優良な入居者層、優良なオーナー層は、数ある不動産業者の中で、「安心、安全を提供してくれる信頼できる業者」を選びたいと思っている人たちです。しかし実際には、このさまざまな企業で提供されるサービスには、それほどの差はありません。つまり、不動産業とは、ブランドのない集まりなのです。では、入居者・オーナーは、何を基準に業者を選んでいるのでしょうか。それは業者への「信頼」があることは明らかと言えましょう。

不動産業者を選ぶ基準は「信頼」なんですね。

佐々木氏 その信頼は、「三意」から生まれるともいえます。私たちは、大和ハウスの創業以来「三意」を大切に考えてきました。「三意」とは、「創意」「誠意」「熱意」の三つを総称しています。私たちは、この「三意」を大事にして仕事に取り組んできました。

ありがとうございました。

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*この記事は2009年6月に取材したものです

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