第一法規株式会社|教育研修一覧

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CSR推進部CSR推進グループの武藤文昭氏と小山真則氏

第69回 株式会社間組(2)

第69回も引き続き、株式会社間組におじゃましています。
全国に多くの事業所を有する同社ですが、有効なコンプライアンス研修を全社員に提供できるよう、さまざまな工夫をされています。CSR推進部CSR推進グループの武藤文昭氏と小山真則氏に、具体的な取組みや活動内容について伺いました。
インタビュー時期:2011年6月

(インタビュアー:えり)

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具体的なコンプライアンス活動の取組み内容は、現場が決めていらっしゃると伺いました。

武藤氏  当部で決めた課題について、本部や各支店で取り組んでもらうようお願いしますが、課題に対して、具体的に何をやるかについては、各部署で考えてもらっています。自分たち自身で、自分たちの職場にあった方法を考えて実践してもらうのです。取組みの内容までこちらから指示してしまうと、押し付けの活動になってしまいますし、効果も上がりません。あくまでも自主的な活動が中心です。

小山氏  年間の活動サイクルとしては、まず、当部が立案した基本計画に沿って実際に展開した内容を、本部や各支店から具体的に報告してもらい、本年度の活動を総括します。この報告内容をもとに、各種法律の改正や社会環境の変化などを加えて次年度の基本計画を立てます。

武藤氏  そして、PDCAサイクルにのせて実施し、1年経ったらまた活動結果を報告してもらい、次年度の活動計画へとつなげています。

言われたことをそのまま実行すればよい、という姿勢では、各部署の実情に即した効果的な活動にはならないということですね。

武藤氏  部署ごとのニーズにあった取組み、創意工夫、そして自主性がとても重要です。たとえば情報管理であれば、知識教育も大切ですが、改めて社外秘文書の管理がちゃんとできているかチェックするなど、いろいろな取組みが考えられると思います。研究部門なら、著作権についての最近の動向をみんなで勉強するのもよいかと思います。自分の仕事に関係ないとなかなか身につかないけれど、関係があると思ったら身を入れてやる、というのはよくあることだと思います。

コンプライアンス研修については、どのような内容で実施されていますか。

武藤氏  最近の研修テーマとしては、CSRがあります。法令順守だけではなく、さらにワンステップ上がっていこうということです。今まではどうしても、個別の法律に関連する研修が多く、実務に直結する特定の部門を対象としたものが中心になってしまうことも多かったのですが、もっと広く、全社の隅々まで教育が行き届くような、そんな展開を目指しています。

小山氏  また、当部が直接、一律の研修として計画・教育するコンプライアンス研修もありますが、部署によってコンプライアンスで重視すべきポイントが違ってくる部分もあるので、一律の研修とは別に、各部門独自の取組みもお願いしているところです。

武藤氏  ただ、研修については、マンパワーに限りがあって、集合研修だけでは限界もありますので、いろいろと工夫が必要ですね。

具体的には、どのような工夫をされているのですか。

小山氏  これまでは、「担当者が本社に出向いて、集合研修を受ける」という手法が中心でしたが、昨年、初めて、「研修講師の講義を録画して、それを社内のイントラネットを通じてストリーミング配信する」という手法もあわせて採用してみました。従来の集合研修に、この配信による研修を組み合わせたことで、研修の受講者数を、大幅に増加させることができました。

武藤氏  事業所によっては、まだ通信環境が若干悪いところがあるので、そのような事業所に対しては、映像を焼いたディスクを郵送して、それを観てもらうという対応もしています。極力、同じ内容のものを全社員が観られるようにしたいと考えています。

受講条件の違いなどで差が出ないよう、全社員へのきめ細かな配慮をされているのですね。

小山氏  全社員に同じ内容の研修を提供するという趣旨で、定期的に、webによる確認テストも実施しています。これは、CSRやコンプライアンス全般の問題について、年2回、2択あるいは3択形式の25問を提供するものです。当社の社長も、社員と一緒に受講しているのですよ。

武藤氏  確認テストについては、受講率は着実にアップしており、直近ではほぼ全員が受講しています。

小山氏  受講率を上げるためにも、出題する25問の内容を、毎回見直しています。具体的には、CSRへの理解を深める問題、適正な営業活動や建設業法に関する問題、今現在の世の中の動きを知ってもらうための問題、コンプライアンス委員会などで話題となった事項を取り上げた問題などを扱っています。

確認テスト画面
webによる確認テスト
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武藤氏  確認テストをとおして、業務に密接なかかわりのある法改正などについて周知することもねらいの一つとしています。例えば、建設業にとって大きなテーマの一つに、環境があります。環境保護や廃棄物処理といったテーマは、建設工事と密接に関係します。法改正をうけて、われわれの仕事内容が変化している部分もたくさんありますので、このような変化は、正社員でも派遣社員でも、社員ならみんなが知っていなければなりません。そういったテーマを選んで問題を作成しています。

とくに環境対応などは、たとえ過失であっても誤った対応に言い訳はできないですし、「知らなかった」では済まされない問題ですね。

小山氏  そうですね。また、情報漏えいなどのテーマも、重点的に取り組んでいきたいですね。今年の基本計画にも盛り込んでいるのですが、インサイダー取引などで「うっかり」違反してしまったなどということがないよう、ミスを未然に防ぐような知識学習にも取り組んでいきたいと考えています。

武藤氏  「なんかちょっと危ないな」というような、「コンプライアンスの感度」のようなものを身に付けていくことが大事ではないかと思います。すべての知識を頭に入れるのは、そう簡単にはできません。おかしいと思ったら周りや管理部長などの責任者に相談すればいいし、CSR推進部に相談してもいい。コンプライアンス教育のポイントの一つは、そういうところにあると思います。そのまま流れてしまいそうになるところで一歩立ち止まれるかどうか、この判断如何でその先に待つ結果は大きく違ってしまうからです。

最後に、今後、どのような点に力を入れて活動を展開されていくかをお聞かせください。

小山氏  2010年から本格化しているCSRの取組みを、さらに進めていきたいと考えています。コンプライアンスというのは「法令順守だけではない、広く社会の期待に応えること」だという点を、今一度、全役職員に浸透させていきたいと思います。

CSRのポスター
CSRのポスター
※クリックすると拡大します

武藤氏  コンプライアンスの取組みを開始した当初、まずは独占禁止法や建設業法に関するコンプライアンスに特化して取組みを進めた経緯もあり、「コンプライアンス=法令順守」という感覚がまだまだ残っていると、最近、改めて感じることがあります。研修一つとっても、一部の法律論に偏りがちな側面もありましたが、こうした状況を変える意味もあって、これまではそれぞれの法律専門の弁護士に研修の講師をお願いしていたところ、今年はコンプライアンス専門の弁護士にお願いするなど、試行錯誤しています。

小山氏  建設業法などの専門的な勉強はもちろん重要ですが、そうした知識を活かすベースとも言える、コンプライアンスそのものについての理解がまず必要です。

武藤氏  コンプライアンスのなかでも特定の分野については、やはり自分の仕事に直接関係がないと、なかなか難しい部分があるかと思います。今年の研修の内容は、コンプライアンスの考え方の基本、概論のような内容を考えています。「コンプライアンスとはこういうものですよ」という足元のところです。「企業にとってのコンプライアンス」という観点で、法令順守だけでなく、コンプライアンスをリスク管理と捉える視点で講義形式の研修を実施する予定です。

小山氏  今一度、全社的にコンプライアンスの感覚というか、素地をつくっていきたいと考えています。

武藤氏  「確かに法律は守っているけれど、間組のやっていることは…」、などと言われないようにする、そういう感度と判断が求められていると思います。今後は、こうした社会の変化を敏感に捉えた活動に重点を置いていくことが必要だと考えています。

本日は、貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。

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*この記事は2011年6月に取材したものです

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