第一法規株式会社|教育研修一覧

todanabar
専務取締役機能部門管掌 チーフコンプライアンスオフィサー渡辺厚志氏

第5回 ITCネットワーク株式会社 (1)

第5回はITCネットワーク株式会社へおじゃまいたしました。
専務取締役機能部門管掌 チーフコンプライアンスオフィサーである渡辺厚志氏に、業界においても特に積極的にすすめているコンプライアンスへの取り組みについて、熱い思いを語っていただきました。

(インタビュアー:たなやん)

line

企業不祥事の多発から、企業に対し法令遵守が強く求められておりますが、御社がコンプライアンス体制の構築に取り組まれたのは、いつごろからでしょうか。

渡辺氏  ご指摘のような社会の法令遵守の動向にあわせて、当社は、コンプライアンスプログラムを2003年1月に、またアイ・ティー・シーネットワーク企業行動基準を同時期に制定いたしました。社員には、企業理念と企業行動基準を記したカードを社員証ケースに入れて常に身に着けるように指導しております。

コンプライアンスの重要な要素である「報・連・相」についても整備されているそうですが。

渡辺氏  当社では、法令や社内規程への違反行為、社会規範に照らし問題がある行為、取引先との関係に重大な影響を及ぼすような事故等を『内部情報』と定義し、それらがラインを通じて報告され、一元管理される仕組みとしています。特に、携帯電話の代理店という業態から、当社は、お客様が携帯通信事業者に提示する個人情報や通信の秘密に関する情報を大量に扱っています。その適正な取扱いは当社の事業の根幹を成すものですので、それらに関する事故は、FAXの送信宛先誤り、店頭カウンターでの申込書の渡しミスなども全てチーフコンプライアンスオフィサー(以下「CCO」という)である私に報告されるようになっています。

具体的な報告の流れはどのようになっておりますか?

渡辺氏  報告を受けると、私が内部情報のレベル(重要度)を判定し、1件1件の対応や再発防止策を指示し、その実施完了についても報告を受けています。この制度により、同様な内部情報の再発防止にもつながりますし、会社全体に事件・事故を減らそう・防ごうという意識が浸透してきました。内部情報の報告は、原則として直接の上司に行うわけですが、上司が不正に加担していることも考えられるため、経営企画部長やCCOに直接通報できたり、また社外(顧問弁護士)に通報窓口を設けたりすることで、報告しやすい体制を構築しています。

御社の具体的なコンプライアンス体制、仕組みをお聞かせ下さい。

渡辺氏  当社では、コンプライアンス・環境・情報等に関して、良き企業市民としての当社の在り方を検討するため、2004年10月にCSRコミッティを設け、その下部組織として5つの委員会を設置しています。その中の一つに、コンプライアンス委員会があります。
この委員会は、私が委員長を務め、社長、常勤取締役、各部門長、常勤監査役、管理部門の部長と顧問弁護士が出席し、定例は四半期ごとに開催しています。定例委員会では、前四半期に起こった重大な事件・事故の内容や再発防止策、コンプライアンスに関する社員教育等の啓発活動状況、当社事業にかかわる法令関連情報などが報告されており、全社で情報を共有しております。また、臨時でコンプライアンス委員会を開くことがありますが、これは先ほどの内部情報の発生報告が、重大な緊急性の高い事故であった場合に招集しており、対応策の検討、決定までを行います。

御社におけるCCOの役割や仕事について、具体的にお聞かせ下さい。

渡辺氏  CCOとしての私の役割は、コンプライアンス委員会の議長を務め、内部情報の対応方針の決定を行っているほか、半期に一度、当社のコンプライアンス状況を取締役会に報告しています。また、内部情報を統括している立場から、上場企業としての情報開示の要否も私が判断することになります。

コンプライアンスの徹底のため、社員教育が欠かせませんが、御社では、どのように社員教育を実施しておられますか。社員教育のほかに、コンプライアンスの啓発活動は何をしておられますか?

渡辺氏  社員には、「コンプライアンスは会社が社会に存続する前提であり、ルール違反を犯してまでも利益計画を達成するというのは間違った考えである」ことを経営陣から繰り返し伝え、就業規則上もコンプライアンス違反は懲戒の対象であることを明示しています。入社式(中途採用者向けには毎月開催)では、企業にとってのCSRの必要性と、コンプライアンスの重要性について、私が直接話をしています。
また、精神論だけでなく、守らなくてはならないものを正しく理解してもらうことも必要なので、新卒社員・中途社員を問わず、正社員及び契約社員全員に対して、第一法規さんの教材を利用したケータイスタディ(携帯電話によるEラーニング)を実施しています。

詳細な中身について教えていただけますか?

渡辺氏  入社1年目の社員には教材「クイズで学ぶコンプライアンス」により、携帯電話で120問のクイズ形式の問題を解いてもらい、学習期間終了後には同内容のテキストを配布し、繰り返し再学習に努めてもらっています。入社2年目以降には、事前に学習テキスト「会社員のためのコンプライアンス入門」を配布し、自分のペースで学習した後に60問の確認テストを携帯電話で年2回受けてもらうという形です。
当社は全国で携帯電話の代理店事業を展開しているので、社員は全国のショップに分散しており、また、ショップでは必ずしも社員1人にPC1台という環境ではありません。このため「携帯電話」という手軽な学習ツールは、当社に非常に適しています。

長期的に研修に取り組んでおられるようですね。

渡辺氏  現在は3年サイクルの3年目に入っています。1年目の「クイズで学ぶコンプライアンス」では、コンプライアンス知識を広く浅く養うことを目的としていました。2年目と3年目の「会社員のためのコンプライアンス入門」では、2年かけて事業に関連する法令分野をより深く学習できるようにしました。
また、「ケータイスタディ」は、ただ社員が問題を解いて終わりではなく、細かな成績表が提供されるので便利です。各社員向けの成績表では、分野ごとの自分の得点と会社の平均点が一目でわかるようになっているので、社員のモチベーションアップにつながり、自己学習や管理者の指導の手助けにもなります。また、組織単位での成績表では、理解度テストを行った法令分野ごとに正答率が表示されているため、当社が今後どの法令分野に力を入れて教育をすれば良いかがわかります。

この他にどんな啓発活動を行っていますか?

渡辺氏  これまでお話ししたのは正社員向けですが、派遣社員に対してはドラマ仕立てのビデオ等による研修を行っています。それ以外にも例えば、経営企画部が社内報に「今日もコンプラってる?」というコラムで法律用語を噛み砕いて解説したり、当社事業に関連する法令の改正情報を紹介する「法令ヘッドライン」をイントラネットに発信したりしています。イントラネットにはこのほか、コンプライアンスプログラムの付属資料として「関連法令チェックシート(業務に関連する約20法令をかいつまんで解説したもの)」を置いて、社員がいつでも情報を取りうる状態にしています。

コンプライアンス研修を受講した社員の方の反応はいかがですか?

渡辺氏  携帯電話は当社のメイン商材ですから、社員には馴染みが深いというのもあるのでしょうが、受講者のアンケート調査を見ても、通勤途中で効率的に学習できたり、毎日履修を促すメールが届いたりするので忘れにくいなど、概ね好評のようです。

― この続きは、こちら! ―

Copyright(C)DAI-ICHI HOKI co.ltd. All Rights Reserved.
無断転載、複製はお断りします。本サイトのお問合せはこちら