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人事教育部ビジネス教育担当部長の宮田正樹氏と、経理部内部統制推進グループマネージャー中西英雄氏

第39回 株式会社日本製鋼所(1)

第39回は株式会社日本製鋼所を訪ねました。お話をうかがったのは、人事教育部ビジネス教育担当部長の宮田正樹氏と、経理部内部統制推進グループマネージャーの中西英雄氏。ヘルプラインの周知・徹底からコンプライアンスに対する意識づけの取組みまで、たいへん熱心に取り組んでいらっしゃることが、ひしひしと伝わってきました。

(インタビュアー:よっしー)

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「コンプライアンス・ライン」とは何ですか?

宮田氏  いわゆるヘルプラインです。公益通報者保護法の導入(2006年4月施行)にあわせ、当社でも内部通報制度(ヘルプライン)を整備しました。それ以降、制度の存在を周知してきているのですが、実際には、あまり通報はありません。あんまり通報がないものですから、名称が良くないのかと思って、「内部通報制度」という当初の社内的な名称を、「コンプライアンス・ライン」に変えました。

内部通報制度の名称を「コンプライアンス・ライン」へと変えてから、通報は増えましたか?

中西氏  いえ、相変わらず、通報はあまりないですね(笑)。

宮田氏  たとえば、通報に対するフィードバックができないという理由から、当初は匿名による通報は受け付けていなかったのですが、通報を増やすため、匿名も受け付けることにするなど、いろいろと工夫はしているのですが…。

中西氏  制度はあるのに、運用されていない。ということは、みんなが制度の存在を知らないのではないかと考え、何度も職場に案内を発し、説明の機会を設け、周知用の小冊子も、増刷を重ねてどんどん配布いたしました。

コンプライアンス・ラインマニュアル

宮田氏  小冊子は、結局、関係会社を含め全従業員に配布しました。ですから、制度の存在はもう周知されていると思うんですけどね。

中西氏  冊子を机の上に置いておくだけかもしれない。それでも「とりあえず、みんなの目に触れるように」ということを徹底したんです。でもその結果、幸か不幸か、やはり通報はその後も殆どありません。

それだけ周知を徹底されたということであれば、本当に問題が起こっていないということではないでしょうか?

宮田氏  いえ、問題がないとは思っていません。やはり、どうしても通報を躊躇してしまうという面は否めないと思います。職場のなかで、通報した事実がわかってしまうという懸念を払拭しきれていないのだと思います。

人事教育部ビジネス教育担当部長の宮田正樹氏

中西氏  「何が通報対象なのか」という意識が、まだできていないという問題もあると感じています。まさに「コンプライアンス」という言葉の定義づけにも関係しますが、仮にコンプライアンスを狭い意味で解釈し、『法令違反』という重大な問題だけを通報対象だと考えるのであれば、そういう大きな問題は、実際にあまり存在しないのだろうと思います。でも、もう少し広い意味でのコンプライアンス、つまり「法令違反ではないけれども、せっかくちゃんとしたルールがあるのに、そのルールからは逸脱している」というレベルの問題は、けっこうあるはずです。我々は、そのようなルールからの逸脱も、コンプライアンス・ラインを通して知りたいと考えています。

何を通報対象と考えるかについて、事務局サイドと従業員のあいだに、すこし意識の違いがあるわけですね。

中西氏  そうですね。それが、これから我々が対応していかなければならないところです。我々としては、狭い意味でだけでなくて、もう少し広い意味で、ルール違反や逸脱があったら教えて欲しい。通報があったらだれかを責めるわけではなくて、そういうことがないように努力するから、あるいは仕組み自体を見直すから、きっかけを教えて欲しい。それがコンプライアンス・ラインの趣旨ですから。

経理部内部統制推進グループマネージャーの中西英雄氏

ヘルプラインの存在をきちんと周知徹底することも含めて、コンプライアンスをいかに社内で周知・徹底していくかは、どこの企業の担当者の方も、本当に苦労されています。コンプライアンスの周知・徹底という面から、工夫をされていることや心がけていらっしゃることはありますか?

宮田氏  企業コンプライアンスが言われはじめたのは2000年ごろですが、当時から「発信」ということには、力を入れてきました。

「発信」ですか。具体的には、何をどのように発信されてきたのでしょうか。

宮田氏  当時、私は法務グループにいましたが、最初にはじめたのは、新しい法律や当社に関連の深い法律トレンドを、「法令動向ニュース」として、社内のグループウェア上の掲示板に掲載することでした。頻度は2ヶ月に1回程度ですね。コンプライアンスというよりは、社内における法務部門の地位向上という意味が強かったのですが、まずは「法務からの発信」として、従業員に対する発信をはじめたわけです。

グループウェアなどのITツールは、工夫次第でさまざまな使い方ができますね。

宮田氏  同時に、ビジネスパーソンにとって最低限必要な法律知識や、知的財産権などに関する法律講座も、グループウェア上の掲示板上で開講しました。従業員に対する法務教育です。それらのコンテンツは、その後さまざまな法務コンテンツとともに構築したイントラネット上のサイト「法務ページ」にも掲載しています。

従業員に対する働きかけ以外で、たとえば経営トップに対しては、どのような働きかけをされていますか?

宮田氏  取締役・監査役に対しては、メール攻撃が一番効果的だと思いまして(笑)。「役員のためのコンプライアンス」というメール講座を、15話くらいに分割して、一方的に開催したりもしました。やはり、コンプライアンスは、経営トップにしっかりと意識してもらうことが重要です。我々からも、できるかぎり意識づけを行っていくことが必要なのでしょう。

コンプライアンスに対する意識づけは、ある意味で永遠の課題なのかもしれませんね。

宮田氏  意識づけという観点では、書かれたものを発信するだけでなく、“FACE T0 FACE”で発信する重要性も強く感じますね。講習やセミナーという形式で、人を集めて肉声でメッセージを届けること、教育していくことは、これからも全社的に、できるだけ繰り返し行っていきたいと思っています。セミナーでは、第一法規の映像教材も活用していますよ。

ありがとうございます。

宮田氏  また、各部署のトップが集まる機会などには、当社で実際に起きたビジネストラブルの事件・事例を、原因や注意すべき点を含めて、なるべく紹介するように努めています。やはり身近さという意味で、実際の事件・事例ほどわかりやすいものはありません。

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*この記事は2009年5月に取材したものです

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