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同社総務・人事本部総務部総務企画グループ 課長の梶振吾氏

第56回 KDDI株式会社(2)

前回に引き続き、KDDI株式会社におじゃましています。今回は、コンプライアンス推進の取組みを、同社総務・人事本部総務部総務企画グループ 課長の梶振吾氏にお聞きします。取組みの変遷やグループ企業と一体となった取組み体制、研修等の啓発の取組みなど、興味深いお話をたくさんお聞きしたいと思います。
インタビュー時期:2009年12月

(インタビュアー:えり)

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御社のコンプライアンスの基本的な考え方はどのようなものですか?

 梶氏   当社では法令遵守が会社経営の根幹であると考えています。従業員にもそうしたメッセージを常に発信しており、03年に制定した「KDDI行動指針」の冒頭でも、社長のメッセージとして「当社に対する社会からの信頼や評価は従業員一人ひとりにかかっているので、当社の従業員は関係する法令や社内規程を遵守し、高い倫理観を一人ひとりの従業員が持ち、一人の逸脱した行為のために多くの従業員の地道な日々の努力が無駄にならないように十分に留意するように」ということを厳しく謳い、全従業員のコンプライアンス意識の向上に努めています。

これまで、コンプライアンス推進にはどのように取り組んできたのですか?

 梶氏   まず、「KDDI行動指針」の制定と同じタイミング(03年1月)で、「KDDIグループ企業倫理委員会」を設置しました。これを設置したことにより、グループ会社全体としてのコンプライアンスの推進体制が明確になりました。
そして、06年頃までは、コンプライアンス違反の案件に対し、どのように是正していくか個別に対応していました。また、グループ会社でも本体と同じようなコンプライアンス体制をとっていくことが中心となっていました。本体とグループ会社、それぞれが同じ形で、関連規程の整備や内部通報窓口(企業倫理ヘルプライン)の設置を進めたり、「KDDIグループ企業倫理委員会」と同様の組織体をグループ会社の子会社にも設置したりするといった取組みを行ってきました。
07年以降は、従来の体制整備と案件発生ごとの都度対応ではどうしても対応が後手に回ってしまうということから、個別案件対応型から未然防止型へのシフトを図り、一挙に流れを変えていくことになりました。それ以降、研修体制の拡充やグループ全体での取組みとして「KDDIグループコンプライアンス強化期間」を毎年度第3クウォーターに設けるなどして、社員のコンプライアンス意識の向上にも力を入れています。

コンプライアンスの教育はどのように行っているのでしょうか?

 梶氏   全社員を対象としたeラーニングを毎年必ず実施しています。また、新入社員の入社時の研修、異動ローテーションの際の研修、管理職やライン長の研修でも必ずコンプライアンスに関する内容を盛り込んでいます。コンプライアンスに関する取組みは一部の階層に限った話ではありません。ライン長であっても新入社員であっても、幅広く従業員に研修の機会を与えるように留意しています。

総務・人事本部総務部総務企画グループ 課長 梶振吾氏
総務・人事本部総務部総務企画グループ 課長 梶振吾氏

「コンプライアンス強化期間」にはどのような取組みをするのですか?

 梶氏   強化期間は、2~3カ月間設け、毎年グループ全体で統一のテーマを設け、そのテーマに関するセルフチェック、テーマに沿ったeラーニング、職場ごとに10名前後の小集団での意見交換会を実施しています。07年度、08年度と2年続けて「ハラスメントの防止」をテーマに取り上げました。まず最初は、従業員が身近に感じられるコンプライアンスから取り組もうということと、職場の環境を向上させるという意味もこめて、最も身近な就業規則の中にも謳いこまれている「ハラスメントの防止」に取り組みました。

強化期間の効果はどのようなところに表れていると感じますか?

 梶氏   強化期間を実施した後、社員の意識を調査するためにアンケートを実施しています。そのアンケートの中で、「こうした強化期間に取り組んでよかったか」「あまり変わらないか」といった内容の質問をしており、年度ごとに、確実に取組みに対する社員の評価は上がってきています。また、「企業倫理ヘルプライン」の認知度もアンケートの中で測っていますが、これも毎年確実に向上してきています。

09年度の強化期間はどのようなテーマで取り組みましたか?

 梶氏   09年度は「情報セキュリティの強化」をテーマとして取り組み、12月までの間、全社員が一丸となって情報漏えいの防止に取り組むことにしました。当社でも情報漏えい事故等が発生してしまった苦い経験があり、多くのお客様の情報を扱う企業として、もう一度意識を高めなければならないとの認識から、このテーマに取り組むことになりました。

研修ではどのようなことに重点を置いていますか?

 梶氏   未然防止に繋げるための考え方や具体的な方法を理解してもらいたいと考えています。自分の思い込みや判断で処理するのではなく、きちんと上司や関係部署に「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」をしなさいということが基本で、非常に分かりやすい内容になっていると思います。もし上司などに相談しにくいのであれば、「企業倫理ヘルプライン」に連絡するようにも促しています。

「企業倫理ヘルプライン」の運用にあたって工夫されている点などがありましたらお聞かせください。

 梶氏   連絡を受けていると、「こういうことは法律的に問題があるか」「こういったことは違反に該当するのか」といった質問が多く、実際に違反を発見したという通報はあまりありません。ただ、社員から事前にそのような確認の連絡が入るということは、未然防止の取組みの効果の表れでもあると考えています。一方で、重大な案件につながる一報もあるので、そうしたものを会社として深掘りするとともに、公益通報者保護法の厳守はもちろん、通報してくれた社員のプライバシーの保護、あるいは職場の中で追い込まれることがないように、調査にあたっては慎重を期しています。

03年に制定された「KDDI行動指針」とは、どのようなものですか?

 梶氏   当社はKDD、DDI、IDOなど多くの会社が合併してできた会社です。コンプライアンスや行動に関しても文化の違いやばらつきがあったので、一本筋を通したものが必要だろうということから制定したのが「KDDI行動指針」です。40ページほどの冊子で、行動に関する基本的な留意事項をわかりやすくまとめています。この冊子を全従業員に配付し、行動指針の浸透を図っています。新入社員には入社時に配付しています。また、コンプライアンス強化期間のテーマも、直接的にはハラスメントや情報セキュリティとしていますが、内容的にはこの行動指針にリンクするようなものになっており、話が必ず行動指針に立ち返ってくるようになっています。

コンプライアンス推進におけるグループ会社との連携について教えてください。

 梶氏   子会社の企業倫理委員会を上期と下期の年2回開催していますが、そこにはKDDI本体の事務局も同席します。また、子会社の企業倫理委員会の委員には本体の委員のうちの何名かが兼務で入っており、グループ全体で同じ意識レベルを保てるように工夫しています。また、KDDI本体の企業倫理委員会は、トップを代表取締役副会長が務め、代表取締役社長とも適宜情報を共有しています。さらに、委員会のメンバーも各部門の役員クラスが担い、経営幹部が直接コンプライアンス推進にあたる体制を整えています。子会社の企業倫理委員会も同様に、子会社の経営トップ自らが委員長を務めています。また、「コンプライアンス強化期間」も、KDDI本体の事務局と同様に、子会社にも事務局があり、子会社も同じテーマで同じセルフチェック、同じeラーニング、同様の意見交換会を実施しています。

コンプライアンス推進に取り組むなかで難しいと感じていることはありますか?

 梶氏   07年以降、未然防止型へのシフトを進め、ヘルプラインの認知度の向上を図ったり研修体制を充実させており、着実に成果を挙げてきていますが、事業領域の拡大に伴い、新たな違反案件も生じています。
いざ違反事案が生じてしまうと、違反を犯してしまった本人はもちろん、管理責任を担っている上司や同じ職場の同僚・部下、さらに違反内容が重大なものであれば違反を犯してしまった従業員の家族にまで、誰にとってもいい結果にはつながりません。施策を打てば私たちの責務が果たされたということではなく、企業クオリティの向上はもちろん、コンプライアンス違反の加害者・被害者が社内から生じる悲劇を起こさせない、仲間を犠牲にしないという思いで取り組んでいます。そのための努力を重ね、その延長線上に従業員の幸せと会社に対する社会からの信頼があり、これらは必ず両立できるものと考えています。

今後の課題がありましたらお聞かせください。

 梶氏   未然防止型の取組みへの移行を一挙に進めてきてはいるものの、コンプライアンスが知識だけ、頭で理解するだけのコンプライアンスになってしまうと、私どもの意図している未然防止にはつながりません。最終的には現場で、そして頭で理解するのではなく「ホウ・レン・ソウ」など身近にできる方法できちんと一歩踏み出せるような意識の向上を目指したいと考えており、そこが課題でもあります。

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*この記事は2009年12月に取材したものです

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