第一法規株式会社|教育研修一覧

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法務部コンプライアンス室の室長・石川みどり氏と、高山靖弘氏

第19回 三井物産株式会社(1)

第19回は総合商社・三井物産株式会社をお訪ねしました。経営の強い意思で社員の意識改革を推し進め、工夫をこらしたコンプライアンス研修も実施しています。法務部コンプライアンス室の室長・石川みどり氏と、高山靖弘氏にお話をうかがいました。

(インタビュアー:よっしー)

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「コンプライアンスなくして、仕事なし、会社なし」という槍田社長のメッセージは非常に鮮明ですね。

石川氏  コンプライアンスの徹底には、経営陣からの明確なメッセージが欠かせませんでした。皆様に大変ご迷惑をおかけした国後事件・DPF事件の後、社長は社員の意識を変えるべく、社員に向けて強力なメッセージを発信しました。「コンプライアンスの徹底で会社がつぶれるなら、それでもかまわない」とまで社長に言われてしまっては、我々社員も真剣にならざるをえません。経営陣もあらゆる機会に、コンプライアンスの徹底を、全世界の社員に向けて訴え続けています。

石川みどり氏

経営トップの強力なメッセージがあると、社員一人ひとりの意識も変わってきますよね。しかしながら社員の意識改革というのは、大変な道のりであったのではありませんか。

石川氏  社長からの強いメッセージがありましたので、日頃社長との距離が近い経営陣の意識は、最も速く変わりました。また若年層の社員たちは、まだあまり組織に染まっていないこともあり、思考も柔軟で、意識という面で問題はありませんでした。手ごわかったのは会社でそれなりの成功体験を積んできた中間層の社員たちです。従来、数字一辺倒でがんばってきた彼らの意識を変えていくのは大変でしたが、コンプライアンスの徹底を訴え続けて、現在では意識改革もだいぶ進んだのではないかと思います。コンプライアンスは、我々の会社ではもう特別なものではなくなっています。

高山氏  事件が起こった直後は、「事件が起こったら大変なことになる。会社にダメージがあり、下手をすると会社はつぶれる」ということを繰り返し強調し、意識改革をうながすことを目的とした研修も行いました。

社員を対象としたコンプライアンス研修がとても充実しているようですね。

石川氏  あらゆる機会をとらえて研修を行っています。新入社員、5年目・9年目といった節目にいる社員向け、マネジメント層の社員向けなどと、対象となる社員層によって内容も変えています。基幹業務を行う社員・サポート業務を行う社員といった職掌別の研修や、これから海外赴任をする社員や関係会社へ出向する社員を対象とした研修なども行っています。また、営業部ごとの研修では、その業界特有の問題を中心に話をすることもあります。受講者も、いろいろな研修を受けることで、それぞれの研修で聞いた話がつながってきます。受講者の意識は非常に高く、とても熱心に受講しています。

社員の意識が高いというのはすばらしいことですね。なにか研修に工夫をされているのでしょうか。

石川氏  研修では、「教えている」というアプローチはなるべくとらないようにしています。一方的にこちらが話し続けるような研修ではなく、「あなたはどう思いますか」と受講者の間で話を回していくような研修スタイルを心がけています。たとえば少人数のグループにわけて、「仮にこのようなケースがあったとして、あなたがこの部署にいたら、どのように対応しますか」というテーマでディスカッションをしてもらいます。ディスカッションを通し、受講者が自分で考えることができるようにしています。

高山氏  実際に起こった事例を使うこともポイントです。自社で実際に起きた事故や事件であれば「なぜ起こり、どう発見されたのか」「現場の人はどう対応し、その対応は問題がなかったか」「どのような再発防止策をとったのか」ということがよくわかります。そこから得られた教訓は、他の部署でも共有できる場合も多くあります。自社で起こりがちなケースを使うことで、日頃、受講者が心のなかで感じていることを引き出し、話してもらい、足りないところはこちらから補うというスタイルで研修を展開させています。

なるほど。ディスカッション以外のスタイルでの研修も行っていらっしゃいますか?

高山氏  どれか一つの研修方法ですべてをカバーすることはできません。研修スタイルは使いわける必要があると思っています。たとえば、知識面の強化にはeラーニングが向いています。個人がそれぞれの理解度にあわせてじっくりと、学習を進め、テストで理解度をはかることもできるからです。一方、意識を向上させたり、具体的な状況において自分がどう行動すべきかを考えたりするには、グループ形式で社内の事例を検証したり、ディスカッションを通して考えを深めたりすることが有効です。それぞれのよさがあると同時に、どれかをやれば十分ということはありません。

石川氏  当社では年に1度「コンプライアンス週間」を設けて、いろいろな企画を1週間に集中させて実施しています。たとえば、弁護士の先生を講師に呼んで、コンプライアンスについてお話いただいたり、コンプライアンスに関連するような映画の上映会をしたりしています。

高山氏  弁護士などの有識者の方に、大人数を相手に講演していただくのは、社会の動きを知るという意味で有効ですね。

<次回はコンプライアンスの徹底を推し進めた、業績評価制度の大幅な変更についてうかがいます!>

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*この記事は2008年5月に取材したものです

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