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伊勢谷氏

第3回 ニチレイグループ (1)

第3回は、 2004年にCSRプロジェクトを発足し、積極的にCSR活動に取り組まれている株式会社ニチレイへ。なかでも、先進的に取り組まれている「ワーク・ライフ・バランス」の施策についてお聞きするために、株式会社ニチレイで、ワーク・ライフ・バランス施策を担当されている大野氏と、株式会社ニチレイプロサーヴで、ワーク・ライフ・バランスセンターの運営を担当されている伊勢谷氏をお訪ねしました。

(インタビュアー:大麦)

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ワーク・ライフ・バランスにはどのような体制で取り組んでいらっしゃるのですか?

大野氏  ワーク・ライフ・バランスについての主幹は、株式会社ニチレイの総務企画部が担当しています。総務企画部は、一般的にいう人事部の機能を担っています。実際の業務は、ニチレイグループのシェアードサービス事業(人事・経理・総務など)を担っている株式会社ニチレイプロサーヴに置かれているワーク・ライフ・バランスセンターが担当しています。

どのような背景から、ワーク・ライフ・バランスに取り組まれることになったのですか?

伊勢谷氏 「ポジティブ・アクション」に取り組んだことが大きなきっかけです。
1998年に初の赤字決算となったことを機に人事制度を刷新することになり、「年齢・性別・学歴等」の属性ではなく、個人の役割と成果を明確にすることを目的に、2000年に成果主義を導入しました。
その際、役職者の登用を公募制に変更し、募集を行ったところ、女性従業員からほとんど手が挙がりませんでした。あわせて行った「社員満足度調査」においても、男性に比べて女性の満足度が低く、なかでも「5年後、10年後の社内での自分を肯定的に思い描けるか」という項目について、女性の満足度が男性従業員と比べて低いことがわかりました。
このことから、女性だけを対象に追加公募を行うことを決定し、当時1.2 % (900名中11名)であった女性役職者の比率を3年間かけて5%に引き上げることを目標に、ポジティブ・アクションをスタートしました。
※女性の能力発揮の促進について、企業が積極的かつ自主的に取組むこと

具体的にはどのような措置をとられたのですか?

伊勢谷氏 役職者を公募する際に、 2001 年からの3年間は、毎年 10 ~ 15 名の女性登用枠を設定し、会社として女性の役職登用に積極的に取り組みました。初年度の2001年は、20名の女性の応募があり、うち13名が役職者に登用されました。

3年間という期間を設けて、女性を役職者として積極的に登用するための優遇措置を実施されたわけですね。3年間の成果はいかがでしたか?

伊勢谷氏 2002年は、応募者18名、うち11名が登用、 2003年は32名が応募し、15名が登用されました。その結果、2003年4月時点で女性役職者が合計43名となり、全役職者に占める女性役職者の比率も、ほぼ目標の5%に引き上げることができました。

3年間の優遇措置の後はどうなりましたか?

伊勢谷氏 実は、一般公募となった 2004年以降、女性の応募者、登用者とも大幅に減少してしまいました。また、役職者に登用された女性従業員からも、どういう働き方をすればいいのかわからないという不安の声があがるようになりました。

そこから新たなポジティブ・アクションへの取り組みが始まったわけですね。

大野氏  そうです。それまで、役職者の女性比率を増やす取り組みを行ってきましたが、役職に登用するだけで何の手当てもしないのでは難しいことがわかり、定期的に面談を行ったり、アンケートをとったり、異業種他社の同程度のキャリアの方々と交流をもつ研修会を開いたりしてきました。
また、役職者への登用の対象となるのは、結婚・出産・育児などの時期と重なってくる従業員も多いため、そうした従業員に仕事を続けてもらうためにどうすればよいのか、ということも課題として出てきました。

こうした課題にどう取り組まれたのでしょうか?

大野氏  具体的には、託児所を本社近くに他企業と合同で設けたり(カンガルーム汐留)、育児休業から復帰する従業員を支援する育児休業者支援プログラムを導入したり(WIWIW)、在宅勤務をトライアルで実施したり、退職した女性社員を派遣社員として再雇用するプロジェクトに取り組んだりしてきました。

こうした取り組みが、ワーク・ライフ・バランスにつながってきたのですね。

伊勢谷氏 ポジティブ・アクションの流れから、「女性従業員の悩みの解決」だけでなく、「男女に関わらない取り組み」の必要性に注目するようになりました。

ワーク・ライフ・バランスの取り組みとして、どのようなことを行われているのですか?

伊勢谷氏 大きく4つあります。「ワーク・ライフ・バランスセンターの設置」「ワーク・ライフ・バランス分科会の設置」「適正労働時間管理の取り組み」「ワーク・ライフ・バランス塾への参加」です。
「ワーク・ライフ・バランスセンター」はどのような活動をしているのですか?
伊勢谷氏 ニチレイグループ各社のワーク・ライフ・バランスに関する取り組みの支援を行っています。また、ワーク・ライフ・バランスに関する情報を従業員に提供するデータベースの管理も行っており、従業員からの相談をメールで受け付けています。その他、退職した女性従業員の組織化を目的に立ち上げた「アセロラ倶楽部」というコミュニティサイトの運営や、女性従業員を対象にした異業種他社との合同研修の企画・実施、育児休業者へのサポートを行っています。

センターへは、どのような相談が多く寄せられていますか?

伊勢谷氏 育児休暇をとる従業員からの悩みが多いです。

大野氏  産休や育休について、従来は、手続き内容ごとに窓口が異なっており、社員の立場からすると、どこに何を相談したらよいのかが非常にわかりづらい状態でした。そこで、ワーク・ライフ・バランスに関するワンストップサービスを目指し、その窓口として、センターが設置されました。そうしたこともあって、育休関連の相談が多く寄せられています。

「アセロラ倶楽部」はどのような利用状況ですか?

伊勢谷氏 退職した女性従業員を派遣社員として登用する「OG派遣制度」を推進するためのコミュニティ作りを目的に設置したのですが、OGの登録は3割程度にとどまっています。個人情報保護の関係で、OGに直接案内を出せないため、現役の女性従業員にも登録をしてもらう形をとっています。現在、登録者は115名程度ですが、定期的な閲覧者は10名前後にとどまっています。

運営上の課題はありますか?

伊勢谷氏 利用者が少人数で固定されてしまっていることと、サイトがなかなか盛り上がらないことです。いろいろな仕掛けをしているのですが、盛り上がりが持続しないことが課題です。また、「アセロラ倶楽部って何?」という従業員が多く、社内の認知度が低いことも大きな課題で、社内報で告知したりする打開策を実施中です。

サイト内のテーマはどのようなものですか?

伊勢谷氏 基本的にどんなテーマでもありにしています。OGの組織化が最大の目的であるため、OGに人気のあるテーマを取り入れたいと考えています。調べた結果、在職時の同僚や上司がどこの部署でどんな仕事をしているのか知りたいという声が多かったのですが、人事情報の公開はグループ各社の了解が必要等の問題があり、載せられないでいます。
今度テレビで取り上げられる、とか、新商品が出るといった情報をアップしています。OGのなかには、日記コーナーに、日々の写真を撮ってアップしてくださる方もいます。盛り上げ策のひとつとして、8月から現役女性従業員のインタビューを、順次アップしています。

ワーク・ライフ・バランスセンターが企画・実施している女性従業員を対象にした異業種他社との合同研修とはどのようなものですか?

伊勢谷氏 ポジティブ・アクションの一環として、入社5年目以上の女性従業員を対象に、文具メーカーなどの異業種他社と合同で実施している研修です。「キャリア開発セミナー」は2003年からニチレイが中心となって実施しているもので、他社を含め先輩従業員を迎えてのパネルディスカッション等を行っています。

大野氏  もともと、新任役職者の女性従業員を対象に研修を実施していましたが、対象者が少ないため、コネクションのある会社にお声がけをして合同で始めるようになりました。そのうち、キャリア開発だけでなく、各社で評価の高い研修を持ち寄って合同で実施したらどうかという話が出て、それ以外のテーマにも広がってきました。

どのような研修があるのですか?

大野氏  現在は、「キャリア開発セミナー」のほか、「ロジカルコミュニケーション研修」「ビジネスアサーティブ研修」「セルフエスティーム研修」の4つです。それ以外にも、21紀職業財団さんが実施している研修などの外部研修にも、異業種交流も兼ね、参加させていただいています。
※自分の強みに気づき、将来をイメージすることで自信をもってポジティブなやる気を持続する方法を習得する研修

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