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昭和シェル石油、法務室主査の杉本善彦氏

第25回 昭和シェル石油株式会社(1)

今回 は昭和シェル石油株式会社をお訪ねしました。
昭和シェル石油は、エネルギー供給企業として、エネルギーを安全・安定的かつ長期的にお客様に提供すると同時に、持続可能な社会の構築に努めることは、企業の使命の 1 つであると認識しています。この使命を果たすため、コンプライアンスの推進と「 HSSE (健康・安全・危機管理・環境保全)マネジメントシステム」を導入し、強固な CSR 推進体制を確保しています。同社内部統制推進部主任の福井美佐子氏、同社法務室主査の杉本善彦氏にお話をうかがいました。

(インタビュアー:たなやん)

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本年6月に『行動指針(コンプライアンスブック)』を発刊されました。この冊子を作成するに至った経緯について、教えていただけますでしょうか。

杉本氏  当社では、日本でCSR(企業の社会的責任)の概念が一般化する以前の1997年に「経営理念」に基づいて業務活動を展開するための規範として「行動原則」を制定していました。「行動原則」制定の背景のひとつに、シェルグループが1995年から2年がかりで「経営理念(SGBP=シェル・ジェネラル・ビジネス・プリンシプル)」を策定したことが挙げられます。シェルグループの経営理念は、トリプル・ボトム・ライン(経済・環境・社会)、つまり「経済的な利益だけでなく環境と社会を経営プロセスに組み入れる」の考え方をコンセプトとしたものです。当時のヨーロッパでの社会情勢は、いわば現在の日本の情勢、つまり企業に対する社会の要請・期待の高まっている状況に似かよった部分があり、その対応として「自分たちに何が求められているのか」「企業としてどう行動すべきなのか」を社内外で議論した結果がシェルグループの「経営理念(SGBP)」でした。この「SGBP」を参考にして昭和シェル石油では「行動原則」を制定しました。

トリプル・ボトム・ラインの考え方は、今ではCSRとサステイナビリティ(持続可能な発展)の基本として定着していますね。では、「行動原則」と『行動指針(コンプライアンスブック)』の関係についてお聞かせ願いますか。

杉本氏  「行動原則」は当社が社会的責任(経済・環境・社会)を果たすことを通じて、社会と企業が共に持続的発展を目指して企業価値を高めることを目的とすること、そしてその実現のためにステークホルダーへの責任と企業活動として行うべき行動を明記したものです。しかし、「行動原則」そのものが基本的な概念であり、その内容は抽象的にならざるを得ません。そのため、「行動原則」の内容の理解を助けるために、その制定時から具体的な説明を付記した『「行動原則」の解説』を作成し、改訂してきました。今回は、それをさらにバージョンアップし、「行動原則」を実践していくために、社員一人ひとりにとって具体的でわかりやすく一覧性のある『行動指針(コンプライアンスブック)』の制定となったわけです。

『行動指針(コンプライアンスブック)』は、『「行動原則」の解説』をバージョンアップしたものなのですね。もう少し『行動指針(コンプライアンスブック)』を制定された経緯について詳しく説明していただけますか。

杉本氏  「行動原則」および『「行動原則」の解説』を作成してちょうど10年が経っていましたので、実際にその内容が業務活動において行動する際の拠り所になっているのか、全社員役員対象にアンケートをとってみました。

福井氏  結果として、「行動原則」も『「行動原則」の解説』も、その存在を知ってはいるが、業務において行動する際の判断基準としてあまり活用していないという意見が多く、もっと業務上想定される場面での具体的な行動のポイントにまで落とし込む必要があると感じました。

広く社内アンケートを取られたということですが、このような「行動原則」の浸透活動の検討というのはいつ頃から開始されたのですか?

杉本氏  法務室を中心に以前より、独禁法や個人情報管理など具体的な項目について社内規則やガイドブック、Q&A等については整備し、研修等の教育活動も頻繁に実施していました。コンプライアンス全般については、より網羅的に全社員を対象に浸透活動を進めていくために、内部統制推進部と法務室で2007年6月に協働で取組みを始めました。

まずその協働チームで検討されたことはなんですか?

杉本氏  「行動原則」の実践にあたっては、平板な解説書ではなく、やはり具体的な行動する際の指針があった方がいいのではないか、他社の取組みはどうかという検討から入りました。『「行動原則」の解説』で扱っている利益相反事項や政治活動等以外の事例についても網羅性や一覧性の観点から、具体的にはこう行動すべき、あるいはこう行動してはいけないと示したものを作成しないと、社員一人ひとりが行動する際の指針として共有できないと感じたのです。そういった検討の過程で、これまであった『「行動原則」の解説』の改訂に限界を感じ、新たに社員個人に向けた『行動指針(コンプライアンスブック)』が必要であると判断したのです。

『行動指針(コンプライアンスブック)』作成にあたって特に注意されたところは?

福井氏  ちょうど前年にシェルグループでも、同じように「SGBP」を具体的な行動のポイントに落とし込んだ「Code of Conduct」が完成したばかりでしたが、こういったシェルグループの活動だけでなく、他社の事例・取り組みや経団連のガイドライン等も広く参考にし、われわれ昭和シェル石油のメンバーの一人ひとりがその内容を認知・理解し、納得の上、実際の行動に移すことができるかどうかを最も重要視して取組みを始めました。

シェルグループや他社の取組みを学びつつ、“昭和シェル石油の行動指針”をまとめられたのですね。内容は非常によくまとまっていますよね。

福井氏  ありがとうございます。ですが、これで「行動原則」の企業理念、また当社のコンプライアンスの全てを網羅しているとは思っておりません。むしろ『行動指針(コンプライアンスブック)』の発刊をきっかけに、それぞれの部署で業務を行う上でコンプライアンスに関する疑問点・質問がでてくる、また話題として会話にのぼるというようにコミュニケーションのツールになればとの思いが強いですね。これが始まりだと思っていますし、『行動指針(コンプライアンスブック)』はその次のステージに進むためのツールです。

次回は、昭和シェル石油のコンプライアンス活動の取組みについてご紹介します。

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*この記事は2008年9月に取材したものです

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