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昭和シェル石油、法務室主査の杉本善彦氏

第37回 TOTO株式会社(1)

第37回はTOTO株式会社をお訪ねしました。2001年より企業活動において法令や社会的ルール等を遵守し、公正・透明な行動でお客様の満足を目指してきました。今回は、法務部コンプライアンス推進グループリーダー時枝氏にお話をお伺いしました。

(インタビュアー:大麦)

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御社がコンプライアンス体制の構築に取り組まれた時期、きっかけについて教えてください。

時枝氏  2001年よりコンプライアンス体制について取組みを始めました。
背景には、当時、企業を取巻く環境が大きく変化している中で、以下の3点がポイントとして挙げられていました。
<1> 国内外で経営基盤を揺るがす企業不祥事が発生していましたので、各企業とも企業倫理・法令遵守の確立が急務になっていたこと。
<2> 国際会計基準への移行によりグループ経営における収益力・成長力および信頼性の向上ならびにディスククロージャーや公開情報の透明性を確保することが重要となっていたこと。
<3> グループ内において、雇用形態が複雑になっており従業員間の意識にミスマッチが生じている現象があることや公表するまでの内容ではないが社員の不祥事が発生していたことです。

御社のコンプライアンス体制、仕組みには、どのように取り組まれたのでしょうか?

時枝氏  2001年に「コンプライアンス推進委員会」を設置し、コンプライアンスに関する取り組みがスタートしました。その中でコンプライアンス体制やしくみ、取り組みについて検討を重ねてきました。2006年度からはコンプライアンス委員会の委員長を社長にする組織に改正しより体制を強化しています。

2001年
コンプライアンス(法令遵守)の手引きの検討、
不正行為の情報連絡制度の検討
2002年
コンプライアンスの手引き配付(管理職対象)、
スピークアップ制度(社内通報制度)の導入
2003年
コンプライアンスの指針策定、コンプライアンス宣言発表、
取締役の法令遵守ガイド配付、コンプライアンス手帳配付(全社員対象)
2004年
拠点別コンプライアンス推進組織の設立、
コンプライアンス意識調査の実施(以後毎年)
2005年
関係法令解説書の作成と周知度の徹底、コンプライアンスの手引き配布(全社員対象)、
コンプライアンス委員会メンバーを本社管理部門中心から推進組織に移行し、メンバーを拡大

      研修については、2002年よりコンプライアンスの基礎研修を役員・幹部社員→管理・監督者→社員へと順次実施し、その後コンプライアンス意識が浸透するようEラーニング教材やビデオ研修を中心に推進しています。
結果として導入から5年間かけてコンプライアンスの浸透と定着を推進してきましたが、PDCAサイクルのPDの方はキチンと運営できていましたが、CAが不十分であったことが社内で指摘されましたので、以後、意識調査結果等を用いながら課題の抽出とフォローの強化に努めるとともに、未然防止、再発防止を図るため部署内の事例や他社事例を用いて水平展開を実施しています。

コンプライアンス研修の中でも、特に力をいれて研修を行っているテーマなどはございますか?

時枝氏  導入時期は、「コンプライアンスとは何か」という基礎的な研修からスタートし、Eラーニング等も活用してコンプライアンス意識の高揚に努めてきました。以後は、意識調査を実施する中で社員の皆さんがコンプライアンス違反として感じている内容を分析したり、スピークアップを利用して通報される内容も含めて労働時間管理に関する内容やセクハラ・パワハラといった人権問題に関する内容を中心に研修を進めています。

2007年の課題として、「情報伝達方法の仕組みの改善」という項目がありますが、具体的にどのような改善を行いましたか?

時枝氏  製造・販売・開発・アフターサービス・管理部門・グループ会社等含めて各事業所ごとにコンプライアンス組織を設置し、情報伝達については、この事業所ごとの委員会事務局から各部門に伝えていくしくみで運用していました。工場のように製造部門が中心の事業所であれば、委員会の報告内容を連絡して水平展開もしやすいのですが、本社のように多くの部門を抱えている事業所は、情報が伝わっているかどうかを把握しにくいことから、各部門代表を通じて情報伝達するように変更して、結果を報告していただくようにしました。

御社における、コンプライアンスの周知や徹底のための研修や啓発活動はどのように進めていますか?「グループ全体で取り組む課題」と「各部門で取り組む課題の差別化など」を教えて下さい。

時枝氏  年間4回のコンプライアンス委員会を開催していますが、その中の報告事項としてスピーク・アップ制度を利用した通報内容の開示と対応、社内での好事例や改善事例および社外での事例を紹介して、部署内に水平展開を行っていただいています。また、関連部門と連携して管理職対象、社員対象にした人権研修の定期開催や全社員を対象にしたEラーニング研修を毎年実施し、意識の高揚に努めています。その他には、ミニドラマ教材による選択型研修を繰り返し行ったり、社内報に社員の方々が身近に感じるようなコンプライアンスQ&Aを掲載したり、法務部門では下請法の基礎、独占禁止法の基礎、契約の基礎等のセミナーメニューを作成して、各部署の要請も受けて出前研修を実施しています。一方、2004年度よりコンプライアンス意識調査を毎年実施し、コンプライアンス意識の浸透度等を中心に状況を把握してきましたが、次へのアクションにつながりにくいということもあり、2007年度からグループ社員意識調査に統合しました。これにより会社への信頼、上司との関わり方、コミュニケーションなどの項目とコンプライアンス意識がどのように関わっているのかなど分析して、課題を整理しています。また、意識調査の結果を部署ごとにフィードバックしてそれぞれの部署の課題を部署ごとに分析していただき、各所で取り組む課題を抽出していただいています。

以前、弊社のミニドラマで学ぶ会社員のためのコンプライアンスを購入いただきましたが、どのようにお使いいただいていますか?

時枝氏  導入するまでは、全社共通の教材で年1回研修を実施していました。しかし、製造、販売、開発、アフターサービス、管理部門など セクションによって優先する課題が異なることから、何かいい教材がないかということで、この教材にめぐり合いました。これまでは、部や課単位での集合研修でしたが、課やチーム単位での開催、部署にとって必要な教材を選択して話し合いを行っていただくなどこれまでと異なった研修ということで、好評価をいただきました。開催にあたっては、朝会や就業時間内外での実施など各部署の運用に任せています。導入当初は、全編を見て研修が終わったというような部署もありましたが、次年度は当方のねらいを再説明して、繰り返しの研修で意識を高めていただくよう推進しています。

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*この記事は2009年4月に取材したものです

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