(インタビュアー:えり)
御社のサステナビリティレポートによると、CSRの取組みと企業倫理、環境の取組みと社会とのかかわりについて、とくにスポットをあてていらっしゃいますね。まずはCSRの取組みと企業倫理について、活動内容や御社の特徴を教えていただけますか。
小池氏 当社はインフラ事業ということもあり、CSRは特別なことではなく、事業イコールCSRととらえています。当社の経営目標である「電気を安全に安定的に供給する」ということがCSRを果たすことになる、という考えを持っています。CSRという言葉よりもサステナビリティという言葉を使用していますね。
勝俣社長をはじめ、社員の皆さんはいつごろから「サステナビリティ」という言葉を意識し始めましたか。
小池氏 世の中のCSRに対する関心の高まりを受け、2005年からサステナビリティレポートを作成しております。このレポートは、持続可能な社会を目指す当社の取組みを、改めてCSRの観点からまとめたものです。
サステナビリティへの実践を行っていく中で取組みを見直した、ということですね。ところで、コンプライアンスの取組みを開始された時期はいつごろからですか。
小野氏 1998年8月に原子力の不祥事が発覚したことをきっかけに、世間からの信頼回復や再発防止を図るため、今後の防止・改善対策とあわせて、東京電力グループの企業体質の問題点が明らかになったことからコンプライアンスを徹底し、改善の取組みを展開していきました。
その取組み、推進体制はどのようなものですか。
小野氏 企業倫理についての取組みを実施しています。企業倫理体制を構築し、社内に対してこの体制やしくみを徹底していくために、会長で倫理担当役員である田村が自らリーダーとして率先して取り組んでいます。
企業倫理の取組みを浸透させるための工夫を教えてください。
小野氏 職場の社員1人ひとりへ、行動基準を理解してもらうために様々なツールをイントラネットやメールで提供しています。当社の行動基準には企業倫理上、大切にしたい価値観をすべて反映していますので、その価値観を徹底して共有することが企業倫理の取組みを定着させることにつながると考え、行っています。その際、あまり難しく言っても理解されないため、できる限りかみ砕いたツールを用いるなどの配慮をしています。行動基準の冊子や携帯カードなどが基本的なものです。携帯カードは行動基準の遵守の宣誓書も兼ねていまして、社員は常時携帯していますね。また、業務プレッシャーや人間関係の中でなかなか倫理的な行動がとれないジレンマに追い込まれるようなケースをグループ討議し、倫理的思考回路の形成を図るケースメソッドを活動の中核に据えて実施しています。
グループ全体で7万人を超える人数ですが、活動の効果はどのように測定されていますか。
小野氏 効果測定は、社員のモニタリングやアンケートを行っているほか、社外の方へもアンケートを実施し、協力していただいています。社員の自己評価だけですと甘くなってしまうことを危惧し、社外の目で見るいわゆるCS(カスタマー・サティスファクション)的な取組みを実施しています。
企業倫理についての取組みについて、他にどのようなものがありますか。
小野氏 当社の行動基準の3つの原則の1つである「オープンなコミュニケーション」に基づいて、「何でも言える職場づくり」を強く推進しています。問題が起きようとしているときに、「それは問題ではないですか」とお互いに指摘し合える、悩んだときに相談し合える関係を築けないと、結果として問題行為を放置したり、ひとりで抱え込んでしまったりしかねないですから、お互いに「何でも言える職場をつくっていこう」ということで取組んでいます。
また、取組みの方針として、社員1人ひとりが大事にしたい価値観について、自ら納得、共感してもらえるようにするということを基本においています。そのためのツールについては基本的なもののほか、少しでも効果のあると思われるものは、できる限り提供するようにしています。
ご担当者として、心掛けていることはありますか。
小野氏 企業倫理の取組みというのは継続的に実施するものですので、同じことの繰り返しですが、社員が新鮮味を持って取り組んで、理解、共感できるような工夫、質の高い取組みを効果的に実施できるような工夫、無用な負担感のないような工夫を意識しています。
長濱氏 テクニカルな話ですが、本店からの発信や指示、お願い事項において、誤解を招いたり伝わらなかったりすることがあります。受け手の反応を斟酌して、できるだけ丁寧に発信するように気を配っています。
小池氏 CSRに関する情報は常に網羅性を意識し多くの情報を発信することが求められますが、情報量が膨大になりがちです。ステークホルダーの方々の知りたいポイントなど、外部の視点とのバランスを失わないように、気をつけています。
ありがとうございました。第8回も引き続き東京電力株式会社のインタビューです。
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