(インタビュアー:足尾)
◆1 コンプライアンス体制・環境活動等について
トラスコ中山様の「TRUSCO」とはどのような意味で、コンプライアンスとは何か関係がありますか?
吉岡氏 1994年、中山機工から新社名トラスコ中山に変更しました。「TRUSCO」とは、TRUST(信頼)COMPANY(企業)の造語です。販売店様や仕入先様をはじめ、私たちが関係するすべての皆さまに、「信頼される企業を創り上げよう」という姿勢をダイレクトに表現したものです。
企業理念-存在理念には、「縁ある人々の幸福(しあわせ)を実現する」と掲げ、我々トラスコ中山の社員は、「ステークホルダー」の幸せを実現するために行動しようと謳っています。当社の「コンプライアンス」は1994年の第二創業期がスタートです。
「取捨善択」「心機一変」等、毎年ユニークで熱心なトップメッセージを公表されているようですが…
吉岡氏 年頭所感として、一年間の志にあたるメッセージを創作四字熟語という形式で表現しています。2008年は、「心機一転」を進化させて「心機一変」。発想は「一転」どころではなく、「一変」させることが大切であり、「一変」させなければ世の中の流れについていけないという意味です。他にも「質実貢献」「自孝自得」「競創共栄」など“心を打つ”メッセージが発せられます。全社員の一年間の活動指針になります。また、当社のコンプライアンスの姿勢をご説明する際によく引用される「取捨善択」という四字熟語があります。(2003年のメッセージ)『物事を判断するときは、取捨選択ではなく取捨善択が正解なのです。「損なのか、得なのか」の損得勘定ではなく、「正しいのか、間違っているのか」「善なのか、悪なのか」自問自答の上、必ず損得勘定抜きの「正しいこと」を基準に判断すれば、迷いもなく、判断がブレることもありません・・・』。当社のコンプライアンス活動の基本姿勢としています。
コンプライアンス・マニュアルとして「トラスコ善択ブック」というユニークなマニュアルを出されていますがその目的は何ですか?
湯川氏 企業にコンプライアンスを浸透させることは大変困難なことです。どんなに格調高い立派な行動規範を掲げようと、行動する側の社員に身近な存在でなければなりません。「トラスコ善択ブック」は、朝礼時に行動規範や事例などを継続的に読むことで「社員が1日1回コンプライアンスに触れる」ことを目的としています。VOLⅠ「コンプライアンス・マニュアル」VOLⅡ「コンプライアンス事例集、クイズで学ぶコンプライアンス」とも、親しみやすいネーミングと社員の身近な問題を取り上げてハンドブック形式としています。
社内のコンプライアンス体制について教えてください
湯川氏 社長直轄のコンプライアンス室とコンプライアンス委員会と型どおりですが、特徴として、全国に営業展開している関係から、部署のコンプライアンス推進者であるコンプライアンス・オフィサーが114名います。オフィサーは、各部署での(1)法令研修(2)コンプライアンス上の質問などの回答(3)法令違反チェックや違反行為の防止などで当社のコンプライアンス体制を担っています。
コンプライアンスを機能させるための施策とプロセスについて(PDCA)教えてください
湯川氏 コンプライアンス委員会において、行動計画、研修計画を審議して、実績を確実にフォローしていますが、ややもするとPDCAという言葉だけが先行してしまう恐れがあります。遠大なテーマであるコンプライアンスに対し、当社は当面の重点施策を設け、(1)社員のコンプライアンス意識の醸成(2)実効性ある「ホットライン」制度の定着という身近な問題に絞り込んでシンプルにしています。
善択ホットラインについて教えてください(仕組み、利用頻度等)
湯川氏 組織の人間が自ら組織を否定するのは大変難しいことです。そのために、組織の垣根を超えた機能を持つ「ホットライン」を、いかに実効性あるものにするかが課題です。善択ホットラインは「社内ホットライン」と「弁護士ホットライン」があります。「社内ホットライン」は“いつでも、どこでも携帯ホットライン”をキャッチフレーズに、守秘義務を最優先にして信頼を高め、コンプライアンス室長が出張中であろうと帰宅していようと携帯電話に転送され「通報・相談」ができます。利用頻度は年間平均約50件です。メール、電話、手紙などで受け付けています。コンプライアンスに関係ないものも多くありますが、まずは、社員にとって“ホットライン”を身近なものにすることが慣用です。その中から本来の通報機能が生まれると信じています。「弁護士ホットライン」は年間1~2件です。内容としては、一般的な法律問い合わせです。
環境に対する取り組みとして社内の環境保全活動について、具体的に教えてください
湯川氏 「衣食足りて環境を知る」21世紀は環境問題と真正面から取り組み、本腰を入れての対応を迫られる時代です。空気や水、そして土地を汚さず資源を大切に利用するという考え方を企業経営にも取り入れなければなりません。大切なことは一人ひとり人間が、環境や資源を大切に守る心を育むことではないでしょうか。当社は、2005年5月「ISO14001」の全社認証を取得し、「継続的な改善」を推進しています。具体的活動としては以下の通りです。
環境保全 | 社内の環境保全活動 | |
1.省エネ活動 | 事業活動で使用する電力の削減 | |
2.消費活動 | 事業活動で使用する車両燃料、紙資源の削減 | |
3.大気汚染対策 | 車両からの排気ガス | |
4.グリーン購入、グリーン調達推進 | 文具、事務用品、設備 | |
5.廃棄物削減 | 埋立てゴミ削減、リユース、リサイクル推進 | |
6.作業環境改善 | 紙使用量削減(リサイクル率向上) 社員のウェブ利用推進 物流センターや事業所設備での屋上散水、人感センサー付電気などの設置 |
■ 太陽光発電システム&風力発電システムの設置
■ カタログ、パンフレットをはじめ印刷物すべてを再生紙化
■ 事業活動に伴う、資源使用量・排出量の低減
取扱商品の環境対策につき、具体的に教えてください
湯川氏 ISO14001認証取得企業からの流通側への要求は次のようなものです。
(1) 調達する資材、副資材のグリーン購入を薦める。
(2) 環境影響低減に役立つ設備や物品の調達を行う。
(3) 使用している機器や設備、物品の長寿命化をはかるためメンテナンスや修理(リペア)への要求が強まる。
(4) 環境に配慮していない調達先より、配慮している調達先を優先する。
環境ビジネス | 取扱商品の環境対策 | |
1.取扱商品の環境負荷分析 | 取扱商品のライフサイクルアセスメント実施 | |
2.取扱商品の環境影響低減 | 環境影響を低減するための商品選択 | |
3.環境にやさしいPB商品の開発 | OEMとの協力体制の充実 | |
環境関連機器等の販売 | ||
1.各種カタログでの環境対策品表示 | 総合カタログで環境対応品にマーク表示 | |
修理メンテナンス事業推進 | ||
1.修理・メンテナンスの充実で製品の超寿命化をはかる |
このような傾向は今後ますます進んでいくと考えられ、私たちはこれらに配慮した営業を積極的に展開することにより、取引先様のお手伝いをして参りたいと考えています。
■ プライベートブランド商品への環境対策
■ 修理工房「直治郎」でメンテナンス、修理を推進
■ ゴミの出ない物流をめざす
■ 環境基準をクリアした商品に「環境配慮商品マーク」を表示
その他、社会貢献活動があれば教えてください
湯川氏 トラスコ中山とは全く別組織の財団法人ですが、兵庫県下視覚障害者の皆さまの社会参加促進を目的として「中山視覚障害者福祉財団」が設立され活動しています。奨学金の給付、盲導犬寄贈、「ワンダフルフェスタ」と銘打たれたイベント開催、ボランティア活動拠点となっている「中山記念会館」など様々な社会貢献活動を行っています。中山社長の亡きご母堂清子様が、生まれながらにして光を失ったわが子哲也社長の奇跡的な左目の視力回復や、ご自身の晩年の片目失明が重なり障害の不自由さを実感し、自分の亡きあと何らかのかたちで財産を目の不自由な方のお役に立てればと願っていました。そのご遺志と、「事業も順調に成長したご恩は、社会に還元しなくてはならない」という思いも加わり財団設立に至っています。
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*この記事は2008年5月に取材したものです
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